第18章 寂しい気持ち
二人で盛大に女性を警戒し、存在をないものとして扱っていたのだがお館様の言葉で現実に戻された。
「会議を始める前に言いたいことがあるんだ。」
一気に私たちの緊張感が高まった。桜くんは女性と目を合わせないよう、ついに目を閉じた。
私はできる限り目を細めた。閉じる勇気は流石になかった。
「この度、私は結婚することになった。」
知ってました〜〜〜!!と、桜くんの心の声が聞こえて来そうだった。私も声に出したかったが目を細めたままにいっと笑った。
…二人ともかける言葉が見つからず、しばらく沈黙した。
黙りこくった私たちに女性は困惑したようだが、お館様に促されて畳に手をついた。
「初めまして。霧雨様、桜様。」
その人の声はとても澄んでいた。
わぁ、しゃべった!と驚いて飛び上がった桜くんがしがみついてきたので思わず抱き締め返した。
「「初めまして…」」
柱が二人揃って、抱きつきあって、絞り出した声があまりにも小さくて情けなくなった。
「あまねと申します。この度輝哉様と結婚させていただくこととなりました。」
ぺこり、と頭を下げる仕草ですらお上品すぎて私たちは戸惑った。
「これから一緒に鬼殺隊を支えていくことになる。二人には一番に紹介したくてね。」
余計なことを、と桜くんが言いたそうにしていた。私は黙っておいた。相変わらず桜くんは変な顔をしていたけど。
「お館様、恐れながら申し上げます。」
「何かな?」
たまらず私は手を上げた。
「急用を思い出したので帰ります」
突然の申し出にお館様とあまね様の目が丸くなっていたけれど、私たちは返事を聞く前に柱の狂人的な脚力で屋敷の外へ飛び出していった。