第6章 増えていく謎
律が自分のことをなんでも分かっているんじゃ、と思えば思うほど、頭の片隅でもう1人の自分が否定する。
そんなわけない。神様じゃないんだから。
第一、本当に律が真白の事を好きなら、律が家を出ていく前に告白していた筈だ。真白なら好きな人と何年も離れてしまう前に、絶対告白する。しなかったということは…やっぱり真白をからかっている?遊んでいるだけ?
どちらにせよ、真白の知っている律じゃない。
ふっ、と真白は律と再会したときの事を思い出す。そういえば、引っかかっていたことがあった。
___帰る直前、急に律くんが屈んで私に近づいて……その時に、ワイシャツの襟を少し引っ張られた気がする……。
もしかしたらその時に、残っていたキスマークを見られたんじゃないだろうか。
「でもね、真白の初ちゅー貰ったのは俺だよ?」
「え……そう、だっけ?」
「うん。真白がちっちゃいとき、どさくさに紛れてしちゃった。だから安心して?」
「え?」
一体何を安心すればいいのか分からなかったが、そのまま聞き流す。もしかしたら和やかな流れで元通りに戻ったりしないだろうか。やはり真白はこのまま律が無理やり犯してくるなんて信じられない。
突然律が首筋をひと舐めし、吸い付く。チリッとした痛みを感じて眉根を寄せるもそれは数瞬で終わり、顔を離した律は満足そうな顔をしている。
「いっぱいつけてあげるね、キスマーク」
ふっと笑った顔を見て、漸く理解した。
あ、本気なんだ、と。