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紙一重

第4章 微かな違和感



たった3分で家に着くというのに、真白の足取りは重い。普段ならこんな早い時間に帰宅などしないものなので、いつもの登下校の道がなんだか不思議に見える。一歩一歩ゆっくり歩いて、まだ痛む腰を睨みつける。



「はぁ~~~~~~…」



ため息などつきたくないが、勝手に深く吐き出してしまう。幸せが逃げる、そんな迷信を信じている真白は、咄嗟に口をおおってこれ以上幸せが漏れないようにした。



「もう。…いつになったら治るの…この腰」



最中も最悪な気分だったが、事後もこんな苦痛が残るなら、真白はもう性行為などしたくはない。ほとんど覚えていないが、寝起きの節々が痛む感じは思い出すだけで酷い。



「ほんとに最悪。あ〜、最悪。」



もう二度と会うことなどないだろうが、もしまた会ったら恨み言の一つや二つ言ってやりたい。元来、真白には恨み妬みなどといった感情に疎いが、無理やり処女を奪われたのだ、こんな気持ちになっても仕方ないだろう。



___結局何が目的だったんだろう…あの人が私の机に紙をいれたんだよね?あれ、でも、どうやって学校に……というか、もう呼び出されたりしないよね……?



募る疑問に答えを出してくれる人間はいない。真白はつくづく孤独だ。



「やめよう…もう、楽しいこと考えよう。う〜ん、…そうだ…!今日は夜ご飯シチューにしよう!」



白くてとろとろ、濃厚で具沢山のシチュー。
真っ白な液体に、ブラックペッパーが少し浮いた美味しいやつを作ろう。

まだ小学生の頃に、ある人が作ってくれたシチューの味を、真白はずっと覚えている。
完全に再現できないのはもう経験済みだ。それでも、真白の中でシチューは最高に美味しい料理。

少しウキウキした気分で、いつもの倍の時間をかけて、やっと家の前に辿り着いた。

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