第4章 微かな違和感
階段を下り、保健室のドアの前に再び立つ。既視感があるのは当たり前だが、まだたった2回保健室のドアを見ただけなのに、なんだかもう随分保健室にはお世話になっている気がする。きちんと体調管理をしよう、そう思いつつドアを開けようと手をかけた瞬間、ふわっと柔軟剤の匂いが香った。
「あ……………」
「お!いた!いま探しに行こうと思ってたんだよ」
目の前に白衣が見え、声がする方へ顔を上げる。
「先生…」
「どした、帰るぞ」
ふっと微笑まれ、なぜか胸に安心感が漂う。数回しか話したことがないのに、どうして真白はこんなにもこの先生を信頼してしまうのだろう。
とりあえず入れ、と腕を引かれ保健室に入る。後ろ手でドアを閉め、聞きたいことがあるのになんだか口が動かなくて、ぼーっと先生の話を聞く。
「今日はもう帰れ。俺が色々やっといたから、なんも心配すんな。」
「あ…、ありがとうございます…」
ほ、ほんとに帰っていいの…?でも早退カードももう担任の先生が持ってたし…
「どした?送るか?ちょっとやることあっけどもう少ししたら…」
「いえ!いいです、そんな!」
そこまで迷惑をかけるわけにはいかない、と全力で遠慮する。両手を顔の前でぶんぶんとふって、このままではついてきそうな勢いの先生をなんとか止める。
「まぁ、送ってくのもそれはそれで問題か…」
「そうですよ、先生忙しいですし、じゃあ帰りますね!ありがとうございました!」
本当は帰りたくないが、一応すぐに帰るふりをして先生に背を向ける。ドアを開けようとしたところで声をかけられ、
「なくなったらいつでも言えよ」
それがスカートのポケットの中に入っているピンクの小箱の事だと気づいて、真白は顔を赤くした。