第4章 微かな違和感
「柏木、…何やってんだ?」
後ろのドアをあけ、授業中にすみません、と声をかけた瞬間、先生がこちらを見て、第一声にそう言った。
ほかのクラスメイトも不思議そうな顔で真白の方を凝視している。
一方真白は、状況がよみこめず表情を固めて動きも止めていた。
「え…、何やってるって…」
「帰ったんじゃなかったのか?」
__え、帰る?って、わたしが?
「なんかコウ先生が真白帰らせるって言ってたよー?」
「ほら、荷物も持ってった!」
そう言われ指をさされた自分の机の横には、いつものように真白の鞄は…かかっていない。いったいどういうことだ。というかコウ先生って誰だ。
「具合大丈夫か?早退のカードももう貰ってるから、今日は帰って休め!」
「いいなぁ〜うちもコウ先生と保健室にいたい〜」
「ほんっとイケメンだよね」
「それな?なんで教師やってんのか意味わかんない」
「しかも保健室の」
それな!とクラスメイト達はいつのまにか盛り上がっている。先生にも帰って休めと言われたし…今日は大人しく帰って腰を休めよう。
「じゃあ…失礼します」
控えめにこえをかけると、先生もクラスメイトも別れの挨拶を言って、真白を送り出してくれる。
話を聞いてわかったが、保健室の先生はコウ先生と呼ばれているのか。初対面が初対面だったので名前を聞くなんて発想もなかった…。
(別に先生って呼べばいいしね…)
苗字ならまだしも下の名前なんか知らなくてもいい、と真白は思う。だって先生は先生だし。
「保健室にいこうかな…でもさっきいなかったし、…職員室?」
いや、保健室には戻ってきてるかもしれない、と思い直しもう一度階段を降りていく。登りおりは今の真白にとって相当にきつかった…。