第4章 微かな違和感
「これ」
何かを差し出され、条件反射で受け取ってしまう。小さい箱で、振ってみるとカシャカシャ音がする。
「…なんですか?」
「ピル」
__え、ピル…って、避妊薬!?!?
いきなりの事に驚きすぎて思わず起き上がる。瞬間、腰がピキっと痛んで、呻き声をあげながら腰をさすり大人しく寝転がる。
「コンドームもいるか?」
「はっ!?!?」
「冗談だよ。…それ持っとけ」
なんでいきなり保健教諭に避妊薬を渡されないといけないの!?
ピンクの小箱を恨めしい目で見る。
___そういえば、この間…避妊、してもらってた………?
ゾッと背筋が凍り冷や汗が伝う。考え出すと疑問が止まらず、避妊していたか解りたいのに分からない、思い出せない。子供ができるかもしれない、そんなことも考えていなかった自分が信じられない。もし、もし知らない男の人の子供なんか妊娠したら………頭が冴えわたり手が勝手にカタカタと震えてくる。
「落ち着け。」
ぽん、と優しく頭の上に手が置かれる。
先生の手だ、と認識した瞬間、唇に温かい感触。
「あ……………、せ、んせ」
「……どうした?」
「な、…んで、キ…ス………、」
掠れた声が喉に張り付きなかなか出てこない。やっと絞り出した声は非力にか細く用件を伝える。
唇にそっと触れた何か。離れていく先生の顔。一目瞭然。なにがあったかなんて、嫌でも分かる。放心状態の真白の顔が徐々に赤く染まっていき、手で唇を覆う。震えはもう、止まっていた。
「…いーから、1時間目終わるまで寝とけ。」
慈愛に満ちた笑みでもう一度ぽんと頭を撫でられる。そのまま先生は椅子を片付けカーテンを閉めてしまう。
ぽつんと取り残されて、固まったまま真白は寝転がり、ぼーっとしているうちにいつのまにか眠りについてしまった。