第4章 微かな違和感
「んで、どうした。なんかあったのか?」
頭を撫でられながら、問われる。
__この人、私の事犬だとでも思ってるのかな…というか近くない!?
そんな不満が顔に出ていたのか、少し笑って頭の上にあった手が離される。そのまま「とりあえず座れ」と差し出された椅子に座り、先生も向かい合って座る。
「安心しろよ、学校《ココ》じゃ手は出さねぇからな」
ニコッと笑いながら言われても、何も安心できない。というか、ココじゃとはなんだ。学校以外では手を出すのか…?とんだ保健教諭を雇ったな、と少しこの学校が心配になる。
「えっと…、昨日体調が悪くて、学校を休んだんですけど…それが珍しくて、朝のホームルームでぼーっとしてたら保健室行ってこい、って言われて…」
「なるほどな。熱は?」
「え…っと、無いとおもい…ます」
「一応」
前髪の下に、先生の手が入ってくる。額ごとすっぽり覆われそうなほど大きくて、ああやっぱりこの人も男の人なんだなと無意味に思う。
「ん、ないな。…どうする?寝てくか?」
「いえ、だいじょ…」
大丈夫、と続けようとしたら、真白の腰に鋭い痛みがはしった。表情が勝手に歪んで、思わず腰を抑える。段々と痛みは引いていくが、それでも普段よりはやっぱり痛い。
「どした!?どこが痛い?」
「なんでも…ない、ですっ」
《腰が痛いと言う→なぜ痛くなったのかを話さないといけなくなる&なぜ犯されたのか話さないといけなくなる→色々な意味でやばい》
真白の脳内に瞬時にこの式が編み出され、このまま痛みを我慢して教室に戻ろうと決意する。いくらこんな人でも、教師に知らない人に処女を奪われたなんて言えるわけがないし、言ったらどんな大事になるか分からない。
「腰か?」
(え、なんでわかるの…!!!)
「なんで分かるのって顔だな。分かるんだよ」
不意に先生が立ち上がり、真白に被さるようにして手を背中と膝裏にさしいれる。え、と驚く暇もなく、一瞬で真白は抱きかかえられる。
___お、お姫様だっこ……っ!!
重力のせいで真白にはどうすることもできない。左頬に先生の身体が密着して、息をする度に甘やかな香りを吸い込む。抱えられた足も、肌と肌が直接触れ合っていると思うと不思議に緊張して、真白は更に動けなくなった。