第4章 微かな違和感
え………
「ごめん。さっきまで寝ぼけてたんだ。忘れて」
……え?寝ぼけて…というか、誰!?別人!?
変わり身の速さに理解が追いつかない。先程までとは態度が違いすぎて、瞬間移動ですかと疑いたくなるほどだ。
本当に寝ぼけるとああなるのか、と些かむりやり信じこもうとして、ぎこちなく笑みを返す。
「えっと…、はい、」
「ん、いい子。……………忘れろよ?」
「ひっ!」
違う!この人、猫かぶってるだけだ!!
内に宿る剣呑な目の輝きに、先程を思い出す。紛れもなく同一人物だ。
…ど、どう接すればいいんだろう…
素の態度を知っているだけ、どんなに厚塗りの笑顔を見せられても「いやお前違うだろ」という感覚が拭えない。もういっそあのままで接してくれないだろうか…。
「あー、ここ学校か…完全あっちかと思った」
……あっち?
「なぁ、どっちの俺がいい?」
「え、…っと、できれば、最初の方で…」
「ふっ!」
…え、なんで笑われたの?
心底可笑しいと思っているようなくしゃくしゃの笑顔で真白を見つめてくる。…不思議な人だ。
「アンタ、不思議だな」
「えっ」
今まさに自分もそう思っていたので、おもわず驚いてしまう。それにしても、それは聞き捨てならない。真白のどこが不思議だと言うのだ。
「女なら誰でもあっちの俺がいいと思ってた。アンタは違うな。んじゃ、こっちでいかせてもらうわ」
「あ、はい…」
「俺、副業してんの。んで、今そっちの方だと思ったわけ。」
「…副業ってダメなんじゃ」
「ん?」
「いや、…なんでもないです…」
有無を言わせない笑顔に、言おうとしていた言葉をひっこめる。というか、私一応具合が悪そうだから(?)ここに来たんだけど…