第4章 微かな違和感
「なぁ、アンタ、誰?」
………へ
見たことがない生徒だとしても、まさかそんな言い方をされるとは思っていなかったので、想定外の態度に真白はショックを受ける。
こんな人が、保健室の先生なんだ…
「あ…、え、っと…2ーCの柏木真白です…」
「そこの眼鏡とって」
聞いているのかいないのか、真白の自己紹介を流してテーブルの上を指さす。伊達眼鏡かと思われるほどファッション性の高い丸眼鏡だ。
おそるおそる手に取って、指紋がつかないように渡す。すると受け取る素振りも見せない。
「………?」
いきなり目の前の長身が屈んで、早くしろと言わんばかりの目で見られる。
「かけて」
「え」
「はやく」
なんで私が…?
疑問に思いつつも抗えずゆっくりと眼鏡をかけていく。痛くないように、慎重に。
「終わりました」
「……………」
え、なんで無言なの?
じっと見つめられて居心地が悪い。というか、眼鏡をすると随分歳上に見える。クールな印象だからなのか。素顔の方が幼くて可愛いな、と無意識に考えていると、先程の仏頂面が嘘のようにニッコリと笑みを見せてきた。