第3章 最悪な出会い
~?~
もぬけの殻と化した寝室にはもう既に温もりはない。まだ微かにあいつがいた痕跡が残っていそうで、すん、と鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。数時間前まで抱き潰していたが、ベッドにも自分の身体にもあの感覚はない。…当たり前だが、今更恋しくなって息を吐き出した。
「あーあ、居ねぇじゃん」
「…うっせぇ、分かってただろ」
「ふ、まぁ」
こうなった元凶の内の1人が、俺のベッドに座り込んで勝手に寛ぎ始める。別にこの家は俺の物でもありこいつの物でもあるので文句はないが。
「あ、なんかいい匂いするわ」
あいつが畳んでおいていったんだろう、黒いブランケットを嗅いでニヤニヤしてやがる。隣にドカっと腰を下ろして、ブランケットを奪い取る。鼻に近づけてみると…確かに、ほんのり匂いが残っている気がする。
「そんな良かったのか?」
「…分かってんだろ」
「ふ、まぁ」
さっきと似たような会話をしながら笑い合う。
「…あー、もう1回抱きてぇ」
「それ、俺としてはむしろ頼みたいくらいなんだけど?」
「そうかよ……じゃ、連絡してみるわ」
黒いカバーのスマホを操作して、着信履歴が残っているナンバーをワンタップする。すぐに電話は発信画面に切り替わって、繋いでくれる。
「…よぉ、栄《さかえ》」