第1章 「愛してる」って最低の言葉(ロブ・ルッチ)
「もう片ついたのか、ルッチ」
「あぁ」
室内へと仲間を追って入る。
その出で立ちは全身紅に染まり、彼の妖美さと残忍さを引き立てた。
彼の仲間は彼らしい行動に頷くも、何故、なれあわない彼が特定の"恋人"というものをつくったかを疑問に持っていた。
「何故彼女と関係をつくったの?初めから一線を引けばこんなことにはならなかったはずよ」
「不満そうだな、カリファ」
「当然よ。私も女よ。愛してた人に裏切られた挙句に殺されるのはかわいそうだと思うわ」
「それが裏切った立場にある人間の言葉か」
「それもそうだけど」
カリファはやはり不満そうにこちらをみた。
別に故意にクロエという"恋人"をつくったわけでは無かった。
いつの間にか心に住み着き、いつのまにか彼女を執拗に求めている自分がいることに気づいた。
もう遅かったのだ。あまりにも自分たちの現実とはかけ離れた感情が、知らず知らずのうちに根付き、
手遅れなところまで成長を遂げてしまっていた。
「でも、クロエくらいの能力があれば組織入りも考えられただろうに」
ブルーノが惜しい存在だとばかりに言った。
確かに彼女の能力の高さは組織にとって大いに有効活用できる。
だから、ルッチは彼女を殺すことを選んだ。