第8章 はろー、所有者!(トラファルガー・ロー)
突如聞こえた声。
男とも女ともとれる不思議な声。
自分しかいないはずの空間に聞こえるそれは、耳から入ってくるのではなく頭に直接語りかけるような不思議な聞こえ方。
はっきりとは聞き取れないが、途切れがちに言葉が聞こえる。
辺りの様子を伺うが、その声も同じように周囲を探るような声色。
ーーもって…
もつ、とは何を。
ーーかまえて
もつ、かまえる…
そこから立て掛けてあって鬼哭が不意に目に入った。
まさか…
半信半疑、というか夢見ているかのようなバカらしさに手を伸ばすのを躊躇する。
しかし鬼哭を意識してからと言うもの聞き取りづらかった声がハッキリと聞こえる。
どうやらこの声も戸惑っている。
ーーえ、こっち見てる?聞こえるハズはないし…なんで?
刀に目があるのか。
少し気持ち悪い考えが浮かぶが、こいつは妖刀。
そしてここはグランドライン。
何があっても不思議ではないのだ。
意を決して鬼哭を手に取った。
ーーわ、やっぱり伝わってる…?
「喋ってんのはお前か」
ーーえ、うわーーー!!ローと喋ってる~っ
「うるせぇ」
ーーすごいすごいすごいすごいっ!!
「…」
ーー刀匠様!貴方の夢物語が現実になりましたよー!
興奮し出した鬼哭の声に一旦壁に戻した。
それでもまだ聞こえる声にもう一度うるせぇと言うとピタリと声がやむ。
(くそっ、刀の声が聞こえるってどんなイカれ野郎だ)
心のなかでありえない現象に悪態を付いていれば、伺うような声が割り込んだ。
ーーそんな変なことでもないんですよ、刀の声が聞こえるってことは。
(…お前、心の中も読めんのか)
ーーえ、今のは喋っていないんですか?まだ私には区別が付きません
でっかい溜め息を漏らせば戸惑うような雰囲気の鬼哭。
(変なことでもないってどう言うことだ)
ーーえと、刀匠様…私を作ってくださった方が仰るには、深く刀と心を通わせた剣士は刀の意思を汲み取れると言います。
(俺は剣士ではないんだがな。能力の性質上刀と相性がいいから使っているだけだ)
ーーそうですよね、私長すぎて普通に使うのには不向きですし。それに、先ほどの話も意思を汲み取れるだけであって会話できるなんて聞いたことがありません。
(…)