第8章 はろー、所有者!(トラファルガー・ロー)
ーーただ刀匠様は私にだけ、所有者と会話でき、交流することさえも出きるようになると仰っていました。
(交流?)
ーーはい。
喋るだけではなく、それとは別の交流?
情報が足りずに意味がわからない。
鬼哭に聞いたところでこれ以上はわからないようで当てにはならない。
上陸したらどこかで調べてみなければ。
そしてこんなお喋りな刀はイヤだ。集中できない。
なんとかして聞こえなくなるか黙らす方法はないだろうか。
ーーす、すみません…何分人間と話すのは初めてで、とても楽しくて…
しょげた声色の鬼哭。
とりあえずいろんな書物を読むペンギンにでも話してみるかと鬼哭を持って部屋を出ようとする。
そこで潜水艦が大きく揺れる。
手に取る前の鬼哭は壁から倒れ、傾いた方に滑っていった。
ーーうわわっっ
慌てた声に鬼哭のヒモに手を伸ばしたときだった。
ふわっとした白い光が鬼哭を覆ったかと思えば次の瞬間には人型の物体が転がっていた。
『いたたっなんかぶつかった…』
その声は先ほどから聞こえていた声。
肉声となったからかしっかりとした声になっている。
『あれ…』
漆黒の髪を高い位置で束ねるのは鬼哭に巻き付けていた赤い糸。
おおよそ人間ではない肌の白さに映えるのは鬼哭の鞘の模様が入った髪と同じ漆黒の着物。
帯が白いファーのように柔らかく背で結ばれ伸びるそれは羽のようで、重力に逆らいふわふわと浮いている。
どことなくローの面影があるその人物は、男とも女とも取れない妖艶さを持っていた。
『人間と同じ形になってる…』
己と同じ色をもった瞳が2つ、かち合う。
「鬼哭…?」
人間となった刀との
波乱の生活の幕開けだった。
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おわり。
気が向けば続けるヨ