第6章 プレゼント(ロブ・ルッチ)
店主がルッチをクロエの連れと判断したらしく、にこやかに話しかけてきた。
「彼氏かい?どうだい、このペアリングなんて」
「いやいや、彼氏じゃないって!同僚!」
「同僚…?」
外見年齢は若いクロエ。とても働いている歳には見えなかったのだろう。
政府関係だとばれるわけにもいかず、仕方無しに助け舟をルッチが出した。
「同じスクールからここに遊びに来たんだ」
「そうかい。同じ学校の子ね」
然程気にした様子も無い店主に、一応も誤解は解いておく。どこでどう事が転ぶか分からないから、不穏分子は消しておくに限る。
面倒なことをしてくれた、と言わんばかりに再び視線をクロエに向けると、未だに彼女はその指輪を手にとって見ていた。
「気に入ったのか?」
「えっ!?」
おそらく食い入るように見つめていたのに気づいてないのだろう。
急に思考に割って入ったルッチに驚くステフ。CP9ともあろう者が、聞いてあきれる。
深くため息を着いたルッチに、彼の機嫌が悪いと思ったクロエは急いでその指輪を元にあった場所に戻してルッチに振り返った。
「ご、ごめんね、待たせて。さ、下見も終わったし帰ろう」
「……その指輪」
「い、いいのいいの!てか、アタシにアクセサリーなんて笑っちゃうよね。ただ、この間カリファが見ていた雑誌に載ってて同じだなーって……」
「うるさい」
あまり無い行動を、他人に見られたことに恥を覚えたのだろう。
心なしか紅い頬で必死に弁解する声を一言で遮った。
その後にはクロエの苦笑いが残った。