第6章 プレゼント(ロブ・ルッチ)
所変わって街中。
護衛ルートの視察と、街に馴染んで来いとの命を受けて二人街に出ていた。
服装もいつものきっちりとした格好では目立つどころか変人になるので、カジュアルな私服。
「アンタ、何来ても合うんだねー」
「……」
「てかそういう服持ってたんだ。意外」
「……」
一方的に喋っているクロエに始終無言無表情なルッチ。
それでもお構い無しに喋り続けるクロエを心底煩そうな視線。
それに気づいていながらもクロエは無視する。
「ねぇねぇ、あの店入ろうよ。ルッチ」
「うるさい。お前一人で行って来い」
「えー。長官が"2人"で視察して来い、っていってたじゃん」
「じゃぁ寄り道せずにまっすぐ歩け」
「ちょっとだけ!あんまり街とかショップとか見たことないの!」
「……」
ナイス・シカト。
訴え虚しく彼は立ち止まってはくれなかった。
本当は一人でも見に行こうと思えば行けたのだが、あいにく視察のルートを覚えているのはルッチのみ。
クロエはルッチが居るからいいや、という気持ちで確認しなかったことを今更ながらに悔やんだ。
「ちぇー」
むすぅっと隣を歩くクロエにちらりと目線をやるルッチだが、クロエはそれに気づいた様子もない。
そのまま視察は最後のルートへとなった。
(あー…あのアクセサリー、可愛い)
暫く無言で歩いていた2人。
クロエはきょろきょろと出店で商品を売る人々を見ていたのだが、一つの店を前に、その足が止まった。
それにつられて何事かとルッチも横で止まるのが分かったが、視線はその店の商品に釘付け。
(あの指輪…前にカリファが見せてくれた雑誌に載ってたやつに似てる)
でもその商品は結構な人気で。こんなところに売っているのだろうか、と疑問にも思った。
だが見れば見るほど似ている。というより、実際本物だろう。
「いらっしゃい。この指輪が気に入ったのかい、お嬢ちゃん」
「え、あ…いや」
「コレはね。友人が売っていた商品を回してもらったんだよ。この街にはめったに入ってこない売れ筋人気商品でね。今しがた出したばかりなんだよ」
「やっぱり本物なんですね!」
「あぁ」
店主と盛り上がるクロエ。
珍しいその女の子らしい姿に、ルッチは少々言葉無く眺めた。