第5章 お前が女として恥らえ(ロブ・ルッチ)
「ルッチ、タオル取って」
「……」
「早く!」
毎度のことだが、何故コイツはいつもこっちにいる。
俺をおちょくってんのか、と初めは何度も思った。そしてキレたこともある。
だがそれ以前に俺は男だ。それにクロエもまだ発展途上だとしても女。
「サンキュ。早く入らないとまたカクとカリファにどやされるよ」
「クロエお前は、何で一緒の更衣室にいる」
「え?」
一応、ここの扉前には【男子更衣室】と描いてあったはずだ。
入る直前にも言ったはずだ。ここは男子用だ、と。
だがコイツは「わかってるよ」というだけでスタスタと入っていく。
中に誰かいたらどうするつもりなんだ。
「なに、今更照れてんの?ルッチ。可愛いとこあるじゃ…」
「調子に乗るな。お前のその身体のどこに照れなきゃならん部分があるんだ」
「なっ!それは、お前、女性に対して失礼極まりない発言じゃない!?」
「女として見て貰いたいならそれ相応の行動をしろ。何故男子更衣室にいるんだ」
出てけというように睨んでやる。だが、こんなの効果ないことは知ってる。
あたりまえのこと聞くな、と言わんばかりの顔でクロエは言い放った。
「ここからどんだけ女子更衣室が離れてると思ってるの?こっちのほうが近い」
「……」
だから男子更衣室にて着替えてシャワーを浴びるのだと。
実際女子更衣室はこの広い塔の反対側のフロアだ。
遠いのはわかる。だがそんなの理由になるというのだろうか。
「あ~あ。この傷…お前なぁ、傷の上に傷をつけないでよ。せっかく治ったところなのに」
背中の上の辺りを鏡越しに見つめるクロエ。
もうすでに上半身なにも着ていない彼女は、恥らう以前になんの抵抗もなく脱いでいる。
シャツを掴んでいた手元から視線を上げてそちらをみると、確かに以前つけた首もとの傷の上に新たな傷が。
そういえば戦闘中、首を狙った攻撃をクロエがかわしたとき、髪の毛が数本舞っていたのを見てクロエが怒っていたような気がする。
まぁ、その理由も髪が大事、とかじゃなく、不揃いな髪の毛をみてカリファに怒られるから、という理由で。
「まぁ傷は治るから良いとして、髪の毛は伸びるのに時間がかかるんだぞ」
「それは悪かったな。またカリファに怒られるか?」
「ルッチの所為だってちゃんと言っておかなきゃ」