第6章 津軽さんの喜び組さん 《主人公目線》
わたしは、津軽さんの部屋を飛び出すと、エレベーターに急いで乗った。
!!!
(わたし、バックを津軽さんの部屋に置きっぱなしだったよー!
どっどうしよう!今更、津軽さんの部屋に戻れないよ!!)
わたしは、エレベーターの1階を押した。
マンションの外に出ると、最上階の津軽さんの部屋を見上げた。
電気は、付いている。
(今頃、津軽さん怒ってるよね)
「はぁ.........」
わたしの口から、ため息が零れる。
「瑠璃子!」
名前を呼ばれて、はっと声の方を見ると、元の彼氏のヒロシが立っていた。
「ヒロシ!」
「瑠璃子、こんな夜遅く何してるの?」
「ちょっと、コンビニ行こうかなーって思って」
「何処のコンビニ?こんな時間に女の子が一人でコンビニまで行くって危ないよ。俺、送ってやるよ」
「えっと、大丈夫だよ。わたし刑事だし、そこは大丈夫」
「そうだったね。瑠璃子は、刑事さんだったよな。それでも、夜道は、危険だから送ってあげるよ」
ヒロシは、そう言ってから、真剣な顔でわたしを見た。
「俺達、やり直せないかな?瑠璃子、今、恋人いるの?」
「えっと、いるような、いないような...」
「えっ?どういう事?はっきりした付き合いは、してないって事?」
「それは......」
「はっきりしてないんだったら、俺とやり直せない?別に俺達、嫌いになって別れた訳じゃないし、それに俺、最近瑠璃子の事よく考えるようになった。この前、綺麗になった瑠璃子を見てからずっと。どうして、別れてしまったんだろうな?こんないい女とって」
「ヒロシ......」
「瑠璃子、ここにいたのか。俺の部屋に、下着とバック忘れてたから、探してたよ」
!!!
振り返ると、満面の笑みの津軽さんが立っていた。
「瑠璃子、そういう事だったんだね。変な事言ってごめんな。幸せになって。じゃあ」
ヒロシは、それだけ言うと、わたし達に背を向けて、行ってしまった。
「ウサ、来いよ」
津軽さんは、わたしの手を掴むと、強引にわたしを引っ張ってマンションの入口まで来ると言った。
「あのさ、どういう事?元彼でしょ?医者の」
「マンションの下で会ったんです」
「それだけ?」