第1章 ※契り※
甘美な悦びに身を浸したまま、黒死牟を呼ぶ。やや緩慢な動きで、腕を黒死牟の首に絡めた。
「キリカ・・・」
囁くような呼び声に応えると、黒死牟はキリカの額に唇を落とした。額から頬に滑らせ、辿り着いた唇に愛おしげに口付けた。
抱き合う二人の身体がぴたりと重なる。
(巌勝様・・・)
心の中で誰よりも愛しい人の名を呼ぶ。幾度も。
ようやく唇が離れた時、キリカの双眸が潤んでいた。
「キリカ・・・」
気遣わしげな黒死牟がキリカの頬を撫でた。それが呼び水になったのか、揺らめく瞳から一筋の涙が伝う。
「あ・・・、申し訳ありませんっ」
慌てて拭おうとしたが、それより早く黒死牟の指が動いた。羽毛で撫でるような細やかな手つきで拭う。
「如何した・・・、キリカ・・・」
問うた声は染み入るように優しい。図らずも、キリカは再び落涙してしまう。
「申し訳ありません・・・」
「何を謝る・・・?」
キリカの頬を両手で包み込むと、面を覗き込んだ。
「嬉しくて堪らないのです。貴方の側にいられる事が・・・」
語り合い、触れ合い、心を通わせ合う。それら全てに魂が震えるほどの喜びを感じる。黒死牟をじっと見つめると、愛おしげに目を細めた。
「お慕いしております、巌勝様・・・」
「私もだ・・・」
「貴方と、ずっと一緒にいたい・・・。そう願っている欲張りな私をお許しください・・・」
「キリカ・・・」
言い終わるまで黒死牟の眼を真っ直ぐ見つめていたキリカが、俄に視線を反らした。恥じらうように頬を赤く染める。
そんな様のキリカが、ただただ愛おしい。黒死牟は胸の奥から込み上げてくる思いをぶつけるようにキリカの身体を抱きすくめた。
「巌勝様っ・・・」
「続きをしてもよいか・・・」
二人はまだ奥深くで繋がったままだった。
「は、はいっ・・・」
返事を待たずして、黒死牟は腰を律動させた。たちまち愛撫に濡れそぼった花弁から濡れた音が漏れる。
「ふっ、んぅっ・・・」
叩きつけるように腰を振られ、その衝撃にキリカは眼を見開いた。大きな声を上げ、黒死牟の背にしがみつく。
「あっ、はぁっ・・・、んっ・・・」