• テキストサイズ

月神の恋人 拾遺 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第2章 暁降ちの眠り姫


「う・・・、ん・・・?」

黒死牟の胸の裡など知るはずもないキリカは首を巡らせた。仰向けになり、目を閉じる。

眠りの淵に沈んでいく途中で違和感に気付いた。自分の枕にしては固い。此処は何処だろうか。

「・・・あ、れ・・・?」

「目を覚ましたか・・・」

寝起きの回らない口で呟けば、頭上からほんの少し呆れたような声が降ってきた。

「・・みちかつさま・・・、えっ、あのっ・・・」

黒死牟の膝を枕にして寝ていたと気付くまで、寝起きの頭は数瞬の時を必要とした。

そして。覚醒しきらぬまま、記憶を探り始めた。

黒死牟の隣りに座し、庭を眺めていたのは覚えている。肩にもたれ掛かり、指を絡ませ合い、とりとめない話に興じながら。

しかし。そこで記憶の糸は、ぷつりと途絶えていた。

いつ、寝てしまったのか。もしかしたら話の途中で寝てしまったのではないか。全く思い出せない。

「私・・・、どのぐらい寝ていたんですか?」

「四半刻ぐらいか・・・。よく寝ておったぞ・・・」

「そんなに・・・。あっ、申し訳ありません。足は痺れていませんか?すぐに退きますから・・・」

「案ずるな・・・、何ともない・・・」

「申し訳ありません」と重ねて詫び、慌てて飛び起きようとしたキリカであったが、その身体は易々と抱き留められてしまう。

「巌勝様・・・」

再び、膝の上に寝かされる。

「眠いのであろう・・・、もう少し休むが良い・・・」

「ですが・・・」

黒死牟がキリカの顔を覗き込んだ。視線も口調も労るように優しい。

「この雨では外にも出れぬ・・・。お前も用事が無いのであれば、こうしていたいのだが・・・」

続けて「駄目か・・・?」と囁くように問われ、キリカの鼓動が跳ね上がる。

「いいえ・・・」

無論、断る理由など何処にもない。

「では・・・、決まりだな・・・」

黒死牟が眼を細めた。キリカの髪に手のひらを滑らせる。瞳と同じ、惣闇色の髪。上質の絹のような手触りに似たそれを、黒死牟は幾度も慈しむように撫でた。






















/ 14ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp