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月神の恋人 拾遺 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第2章 暁降ちの眠り姫


絶え間なく降り続ける陰鬱な長雨。

太陽が分厚い雲に閉ざされ、もう幾日目だろうか。

立ち込める空気は重く、生暖かい。地面はぬかるみ、外出もままならない。



黒死牟は縁側に座し、けぶる庭先を眺めていた。時折、湿った空気が頬を撫でていく。

「・・・・」

ふと、視線を落とした。視線の先にいるのは誰よりも愛おしい存在、キリカが膝の上で眠りに就いていた。

手のひらを右頬の下に敷いて、すうすうと寝息を立てている。纏う、暁降ち色の着物が鮮やかだ。

暁降ち色。それは夜明け前の空を表す色。

今朝がた、身支度が整えたキリカが「天気が悪い日は、こういうものを着て気持ちを盛り上げるんですよ」と言っていたのを思い出す。

キリカの額に手を伸ばした。長めの前髪を指で払い、目元を露わにさせる。

初めて出会った時より、幾分か大人びた気配を纏うようになったキリカ。背も少し伸びたようだ。

彼女は日々、成長している。愛し、愛される喜びを知り、キリカは大人になっていく。

その姿は美しくも目映い。咲き初めし花々のように。

「キリカ・・・」

呟き、キリカの頬を撫でた。

長い睫毛に縁取られた目蓋は柔らかく閉ざされていた。ピクリともしない。どうやら深い眠りに就いているようだ。

「・・・・・」

早く、その瞳に私の姿を映してほしい。そして、微笑みかけてほしい。

いや。せっかく寝ているのだから邪魔をするのは良くない。寝かせておいてやろう。

あどけなさを残す寝顔を静かに見守りつつも、その裡では相反する想いが錯綜していた。

「・・・ん・・・」

キリカの睫毛が微かに震えた。薄目を開け、ぼんやりと正面を見つめている。

「・・・!」

現れた、惣闇色の双眸。混じりけのない、深い黒。

初めて見たわけではないのに、黒死牟はその美しさに心を撃たれた。まるで絡め取られてしまったように、目を反らす事が出来ない。

じっと見つめ続けた。息をするのも忘れるほど。
















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