第6章 練習試合と彼女
「はい、ここが更衣室です。…あと、うちの監督と黄瀬君がなんだか色々と失礼極まり無い人で…すいません。
思う部分はあるでしょうけどそれは全部、コートの上でお願いします」
それだけを言って私は海常のロッカールームへと移動した。
森山君は…当然だが居ない。アップを取りに行ってしまってる。
少し不安は残るというかバレてしまいそうだが体育館へ赴いて声をかけた。
「森山君、ちょっといい?」
「!うん、どうしたの?」
近くに来たところで少し緊張してしまう。
そう言えば正式なユニフォーム姿を観るのは初めてな気がする。
「どうしたの、見惚れちゃった?」
「んなわけないでしょ。そうじゃなくて、靴紐」
「え?」
「直した方がいいよ、危ないから」
「あ、ほんとだ。ありがとう、小咲さん」
森山君がしゃがんで靴紐を直しているところで私もつられるようにしゃがむ。
「が、頑張って、ね」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう伝えてから立ち去ろうとすると後ろから聞き慣れた声がかかった。
「小咲さん、」
「はい」
振り返ると、いつもとは違う笑顔の森山君が「ありがとう」とだけ言って練習に戻って行った。
私も頷いてさっさと上のギャラリーへと足を向けるんだった。