第5章 黄瀬君と私
放課後。
私はメールで呼び出された場所で待っていた。
「…遅い」
学校から少し離れたところにある落ち着いた喫茶店だ。
ちらほらとカップルも見えるし仕事で来ている人も居る。
ゆうにもう5分は経つ。紅茶のおかわりを頼もうとしたところで彼は来た。
「ごめんなさいっス、ファンの子に捕まっちゃって…」
「別にいいよ。いこっか」
「待たせたおわび!ここは俺が奢るっス」
財布を出そうと鞄を探ると彼は伝票を持って払ってくれた。
すると太陽みたいな笑顔でいこっか!と笑って手を引いた。
「…動じないんスね」
「少しは恥じらった方が良かった?」
「んー、そういう反応も見てみたいけど…今はこっちのがいいっス」
多分笠松ならここで後ろから蹴り入ってる。
まぁ、そもそも私は一応恋人がいるし手を繋ぐことで一々動揺することもない。
「なんでわざわざ東京に?」
「チームメイトがいるんすよ、東京の誠凛高校ってとこに!
去年できた新設の高校に通ってるんすけどほんっとうに凄くて、幻のシックスマンとか呼ばれてたんス!」
「へぇ…」
それが行くこととなんの関係があるのかは分からないけれど私の勘が言っている。
多分、そこで頭下げることになる、と。
「そうだ、私初めて東京行くから帰りも送ってね」
「とーぜん!ちゃーんと送りますって!」
「うん、ならいいけど」
こういうことを当たり前だと思ってるあたり、彼のモテる要因の一つでもあると思う。