第5章 黄瀬君と私
その日、彼は突然やってきた。
「小咲先輩いまーすかっ!」
「いません」
金色の髪の男の子が私を呼んでいた。
おもわず即答してしまったけど私はいませ「居るじゃないッスか!」
「…何の用事?」
「今日の放課後、ちょっと付き合って欲しいとこがあるんス!」
「どこ」
「東京!」
「………?」
こいつは何を言っているんだが本音だったが、彼はあっ鐘鳴っちゃうからまたね!と陽気に出て行った。
クラスの女子の反感を私に押し付けて。
ただでさえあまり私は好かれてないのにふざけないでほしい。
「アレってモデルの黄瀬涼太?」
「うん。後輩」
「近くで見ると本当にかっこいいね~」
「それは思うけどうるさいよ。ね、笠松」
「うるせーなんてもんじゃねぇだろ」
うるさいというか。なんか、上手く言えないけど…
自分の才能にあぐらかいてる感が半端ない。
しょっちゅう練習休むしギャラリーに手振るし。
だから私はその辺どうにも好きにはなれないけど根が良い子なのは分かる。
この根が良い子っていうのがまた厄介であまり強く言えない。
「それに、あの様子じゃ今日はサボりってことだし…まぁ、行かないって言ったら後がめんどくさそうだし付き合ってくるよ」
苦笑を浮かべたところで先生がやってきた。
それにしても、東京、か。
関東に来てから一度も行ったことないし…これも経験だろう。