第1章 転校生の彼女
しかし、3年次のこの時期。あまり授業もやることがなくほぼ自習という形になっているようだ。
笹野さんと泉さんは他の人と話に花を咲かせているようだ。
「…あ、あの」
「!はい」
「えーっと、俺、森山由孝。バスケ部…よろしくね、小咲さん」
「森山君。あ、いや別にさん付けとかじゃなくていいよ。転校生ってだけだし気遣われるの得意じゃないし」
「そ、そう?…あー、駄目だ、話そうと思ってたこと全部飛んでった笠松たすけてくれ!!」
「嫌だ」
「薄情者!!」
「…笠松君?」
笠松、と呼ばれた彼は私の前の人だ。折角だしこの際に近くの席の人の名前は覚えておこう。覚えられるかは別として知っておこう。そう思い少し席を前に寄せる。
「あ、こいつバスケ部のキャプテン」
「そうなんだ」
「んだ…ちっか!!」
「3mmぐらいしか机動かしてないよ」
「笠松は女子が苦手なんだよ」
「あ、そうなんだ。ごめん。…で、下の名前は?」
「…笠松 幸男。幸せに男」
「縁起良さそうな名前だね。今朝も言いましたけど小咲 春乃です。今日の帰りにでも入部届出しに行くんで短い間ですが部活でもよろしくね」
女子は苦手らしい。さっきから割と挙動不審。
まぁその内慣れてもらえばいいし沢山コミュニケーション取ってみよう。
「あ、ねー小咲ー」
「なーにーいずみー」
「メアドおーしえて?」
「いいよー」
「あ、あたしにもー。……ね、笠松と森山も聞いといたら?同じ部活になるなら連絡先知らないと困るっしょ」
「それもそうだね。でもごめん、私の赤外線ついてないから…あ、あった。これに書いて。
私の方で一斉に送るよ、その方が早いだろうし」
4人分のメアドをちまちま手で入力して、一斉送信。
えーっと……小咲です、よろしく、ね、と…………
一応授業中なんでこっそりいじる。
自慢じゃないけどバレたことは未だに無い。
「あ、きたよー」
「どもねーん」
「笹野も泉も今見るな…ってお前もだシバくぞ!!」
「いーじゃんいーじゃん、ねぇ?」
「…笹野、ありがとう………!」
「はは、良いってことよー」
どうやら森山君と笹野さんは仲良しなようだ。
まぁ何かしらの共通点があるんだろう。