第3章 俺と彼女
春休み最後の一週間。
相変わらずの天気の良さで正直暑い。
「おっはよー、春乃先輩!」
「おはよ、黄瀬君。早いね」
練習が始まる前に来てある程度の準備を済ませておくために結構早い時間からいる。
大体は…まぁ電車の空いている時間。
その時間の駅員さんは大体優しいのでまだまだ乗り慣れない私はすっかり顔を覚えられている。
「俺東京からこっち来てるんすよ。そろそろ学校始まるしその練習もかねてって感じで」
「そうなんだ、えらいね」
「うん!でもこの時間から春乃先輩いるならもっと早く練習しとけば良かったっス~」
……初めて練習に来た時からどうやら懐かれているらしい。
犬の耳と尻尾の幻覚が見える。
「あ、ねね、先輩」
「ん?」
「連絡先聞いてもいいっすか?」
「あ、うん。いいよ。多分春からレギュラー入りだし連絡先知らないと困りそうだもんね」
練習の様子を見てても分かる。監督は明らかに彼を贔屓している。
運動は見る専門の私でも分かるほどにバスケセンスは凄い。
だとしてもあの明らかな贔屓っぷりと彼の当然だと言わんばかりの態度はいけ好かないが…
「へへ、ありがと!」
根はいい子っぽいんだよね。素直で可愛げのある。