第2章 ふつかめ
今日はカカシの好きなものを作ろう。秋刀魚は季節じゃないから無いけど、ナスのお味噌汁は出汁からとって作ろう。
紅の家から帰ってきて、気合を入れて台所に立つ。出る時に鷹くんからご飯いると伝言を貰っていたからだ。
メインは、最近暑いから鶏のポン酢煮にしよう。副菜は胡麻和えにして。
なんて事ないご飯だけど、いつもより気持ちを入れて作った。
初めてカカシの家にお邪魔して手料理を作った日の事を思い出す。
あの時も、美味しい美味しいって今よりずっと下手くそだった私の料理をべた褒めしてくれた。
不味いなら不味いって言えばいいし残していいよって言ったけど、全部食べきってくれた。
思い出に浸ると、その時の感情が鮮やかに蘇る。私なんで疑ってたんだろうな。
そうこうして出来上がると、カカシもちょうど帰ってきた。22時30分。昨日よりは遅いがいつもより早い。
『おかえり!』
「ただーいま。クタクタだよ〜。早くご飯食べたい。」
『もう出来てるよ。』
「ありがとう。今日も美味しそうだなぁ。」
眠たいのもあるのか目をとろーんとさせて鍋の匂いを嗅ぐカカシが途端に可愛く見える。
『今日は茄子のお味噌汁です!』
「久しぶりだね。」
『…カカシの好きな物作ろうと思って。』
カカシは目を瞬かせて嬉しそうに、少し照れくさそうにして私の髪を撫でた。
「なんか、が初めて俺の家に来た時のこと思い出しちゃった。」
『私も。それ作ってる時にすごく思った。』
「食べていい?」
『いいよ。』
「じゃあご飯の後にいただくよ。」
『えっ?』
「を」
『ふふふっ…ばーか。』
肘で小突くとおでこを合わせられた。
「……あぁもう、好きだなあ。」
『私も、だいすき。』
こんなやり取り、こんな空気いつぶりだろうか。
甘くて、穏やかで、ちょっと気恥ずかしくて、そんな気持ち結婚してから随分久しぶりだ。