第3章 みっかめ
「どうされたんですか?その、泣いてるように見えたので…。」
彼は術の相性が私と良かったからよく一緒に任務を組まされてた。
結婚してからそんなに会うことは無かったけど、まさかこんな所で会うなんて。
『ちょっとね、色々あって。』
涙を袖で拭って笑ってみせると、痛ましいものを見るような顔をされる。
「それって、6代目と関係ある事ですか?」
『なんでそう思うの?』
「さっき俺、6代目と女の人が2人で居るところ見ちゃって…それと関係あるのかなって」
そうか、やっぱり執務室だったのか。
すとんと腑に落ちた。木の葉でも指折りの忍なのに、他にバレてどうするんだろう。
火影の名は返上した方がいいんじゃないかとすら思えてくる。
『それヨリさんじゃない?彼女も仕事なんだからたまたま2人きりでいることもあるでしょ。別の事だから大丈夫。心配しないで。』
「キスしてたとしてもですか?」
ひゅっと喉から音が聞こえた気がした。
口の中が急激に乾く。
アズミくんにはバレたかもしれない。
でも、言ってはいけない。頼ってはいけない。カカシが例え不倫してたとしても、
私が誤解させるような真似をする訳にはいかない。
『彼女子供もいるんだよ。私も面倒見てるし、既婚者だし旦那さんのこと本当に大好きなんだから。何かの見間違いだよ。』
「さん…わかりました。そういう事にしておきます。今からどこか行かれる予定だったんでしょ?送ります。」
彼が一旦引いてくれたことに安堵する。
『いやいいよ。アンコの家に行くつもりだし。もうすぐそこだしね。』
「それでも心配ですから。送ったらすぐ行きますので安心してください。」
思いがけない人の優しさにまたぐっと涙腺が刺激された。
今は疎遠になってたけど、彼が優しい子なのは前からそうだった。
唇を噛み締めて下を向く。
3つ数えて心を整えた。
『ありがとう。じゃあ、お願いする。』
ニコリと微笑んだアズミくんは、そっと手を引きアンコの家まで連れていってくれた。
彼の、ヨリさんとカカシがキスしてた っていう話はどうもピンと来ないまま。
あんなに子供も夫も愛してる人がカカシと不倫するだろうか…?
自分の夫の事は信じられないのに、会って日にちがそう経っていない人物の方を信用している自分にも心の中で唾を吐いた。