第3章 みっかめ
何これ。目の前に落ちた赤い見たことの無いショーツ。
天気がいいから、洗濯物を干そうって張り切ってカカシの持って帰ってきた火影の執務室に溜まってたであろう服のポケットにしっかり入っていた。
身体がまるで液体窒素に入れられた時のように急激に冷えていく。
痛い、冷たい。何でこんな物がカカシの服に紛れ込んでるの?
本当は、遅くなってたのは誰かと会ってたから?いけないことをしてたから?
バレそうだから帰ってきてたの?
昨日のは嘘だったの?
だって、でないとこんな物入ってる訳ない。
本当は、本当は、
去年も一昨年も誕生日プレゼントもわざと無かったんだろうか。
私は随分と前から、愛想をつかされていたんだろうか?
相手の女とは長いんだろうか。それはそうだろう。宣戦布告でこんなモノ入れてくる人だ。私と彼が結婚してる事が煩わしくて入れたに違いない。
昨日私に言ってくれたみたいに、「すきだよ」「愛してる」「可愛い」って言ってたんだろうか。
そんな嘘つける人じゃなかった。
でも、愛のためにやってみせたんだろうか。
舞い上がって自分が途端に馬鹿らしく思えた。
馬鹿も馬鹿で大バカだ。何が「やっぱり好き」なんだろう。
相手はとっくの昔に違ってたかもしれないのに。
心を置き去りにしたまま、思考はどんどん進んでいく。
あの時もこの時も、カカシはきっと浮気してたからなんだと証拠を揃えようとしていく。
思えばおかしい所もあったのだ。
ああやって理由をつけていたけど、いきなりご機嫌で帰ってくるものか。
遅く帰ってきて、あっちには執務室もあって。私は滅多にそちらには行かなくて。
女のひとりや2人簡単に連れ込めるじゃないか。
信じたくない、私の夫はそんな事しない。
何かの間違いだなんて気持ちはその度に小さく消えていった。
何時間、そうしてたんだろうか。
リビングに移動してじっとショーツを見ていた。時計を見ると、発見した時から3時間立っている。時計の音が妙に耳にこびりつく。
昼時だが、生憎と食べる元気も気力もなかった。
涙も、出ない。
ただここにはいられないと内なる声が身体を
急かす。