第5章 ※Ever green!④
「キュイ!!」
「ん?」
ふと、背後から鳴き声がして振り返る。すると、小さなサンダースがオレに走り寄り足元に座り込んだ。耳を振って妙にごきげんだ。
「わ、かわいい〜!懐いてるけどグリーンの子?」
首を振って否定する。試しに撫でようと屈んで手を伸ばすと、ぴょんと後ろに飛んで逃げてしまった。その癖、つかず離れずの距離でオレを見つめては、また耳をフリフリしている。
「迷子かしら」
「迷子っつーか、こいつは…」
あどけない顔でオレを見つめる愛嬌の良さ。近づこうと手を伸ばせば逃げるおくびょうな性格。
わかってる。覚えてるよ。お前はあいつをずっと支え、何度負けてもオレに挑み続けた、おくびょうでゆうかんなあいつのいちばんの相棒だって。
「サンダース!どこ!サンダー……あ」
また背後から見知った声がひとつ。
——来たか。
開口一番に嫌味のひとつでも言ってやる。そう思っていたのに。
「よぉ。元気だったか」
今にも泣きそうな顔で立ち尽くす姿に、そんな気は失せちまった。
サンダースは嬉しそうに跳ねてナナの元へ戻ってゆく。ナナをここまで導いてくれたサンダースに、胸中で礼を言った。
「ナナ!」
無口なレッドが珍しく、あいつの名を呼んで手を振った。
「ナナちゃん!」
明るい声でリーフも続く。
仕方ないから、オレも指を2本ピッと立て、昔からの癖になっているお決まりの挨拶で出迎えた。感動の再会をぶち壊すほどガキじゃないからな。
「みんな……!レッド、グリーン、リーフぢゃぁぁぁあん!!」
一方のナナは、ガキみたいに大粒の涙で全身全霊喜びを表現するもんだから、旅立つ日に見せた泣きっ面と重なって、懐かしさと共に当時の記憶が蘇り胸を締めつけた。
「あははっ!そんなに泣かないの」
駆け寄って泣きじゃくるナナを、リーフはよしよしと頭を撫でて落ち着かせようとする。
「……!」
レッドの無言のアイコンタクトに、ナナは笑顔を返した。
「うん。昨日パシオに着いたの。レッドもみんなも元気そうでよかった!ほんとに久しぶり!」
「お前も元気そうじゃん」
「あ、うん。げんき、だったよ」
なんでオレにだけそんなよそよそしいんだよ!