第5章 ※Ever green!④
「ほら、グリーンが怖い顔してるから怯えてるじゃない」
「いいや。オレ様に会えたのが嬉しすぎて緊張してるんだよな?ナナ」
わざとらしく高圧的な台詞を口にし、おくびょうなナナをからかう。さぁどう返してくる?
「……うん。たぶんそうかもね!」
ナナは恥ずかしそうに、涙で潤んだ瞳を輝かせてくしゃりと笑った。
瞬時に、オレの中で眠っていた思いが呼び戻される。この感情に支配されたくなくて、わざと忘れるようにしていたのに。
臆病だったのはオレの方か——?
オレの中で密かな決意が芽生える。
ナナをパシオで鍛え抜き、WPMのチャンピオンにする。
そしていつか、レッドを凌駕するほどの実力を身につけたら、その時は——。
「パシオに来た目的は?」
「もちろん、強くなるため!」
上出来だ。これでもう逃げる口実は与えない。
「なら、明日から毎日トレーニングしてやるよ」
「え、でもせっかくだからゆっくり観光もしたいなって」
「オレが認めるぐらい強くなったらな」
「なんでグリーンに決定権があるの!」
「当然だ。オレから逃げたんだからそれくらいのペナルティはつけないとな」
その一言に、「うっ」と声を詰まらせ目を伏せる。ナナらしい相変わらずな反応。そういう態度が、オレを煽っているのを自覚していないあたり困ったもんだ。
「なんだか、会えていちばん喜んでるのはグリーンみたい」
からかいを無視して、リーフを縦にする卑怯で愛しいナナの腕を引いた。
「無理です!今日はサンダースも疲れてるから!」
「トレーニングは明日からって言ってるだろ」
「ということは、みんなで歓迎会だね!」
「……うん!」
何も言わなくても、オレの意思を汲み取るこいつらは、やっぱり最高のライバルであり親友だ。
「泣くなよ。まるでオレがいじめてるみたいじゃねーか」
「だっで…みんながやざじぐで…っ!」
あたたかな夕陽が、そんなオレ達4人と1匹を、いつまでも優しく照らしていた。
Ever green! fin.