第5章 ※Ever green!④
「まだ痛むか?」
「…ひりひりする」
「ならこのまま少し休むか」
「うん。ね、グリーン…」
「ん?」
自分から、ちゅ、と首筋にキスをしてみた。汗でほのかにしょっぱい。
「っ、なんだよっ」
「ふふふ、いつも私ばっかり不意打ちされてるから、たまには仕返し…」
「かわいい仕返しだな」
「びっくりした?」
「ああ、かわいすぎてびっくりだ」
大して驚いていないし、なんだか大袈裟で嘘くさい。それに何より恥ずかしい。
「なんか嘘っぽい」
「嘘じゃねーよ」
手のひらが頬を優しく撫でる。
「オレさ、感謝してんだ。ナナに」
何を言われるのか身構える。いつもならここで何かを仕掛けてくるはずだ。
「…感謝って?」
「パシオに来てくれただろ。しかも大会で優勝もしちまった。おまけにお前はオレを選んだ」
「“選んだ”って、そんなっ」
動揺を隠せず声が震える。冗談なのか本気なのか分からないけど、こんなこと言ってくるのは初めてだ。
「選んだんじゃない。私は、ずっと前からグリーンのことが…」
「オレだって同じだ」
「えっ」
心臓がドクンと強く脈打つ。
「お前がいなくなってから——本当なら待ってるだけじゃなく、無理やりにでも探し出せばよかったんだ」
ぴたりと密着した胸から、グリーンの鼓動が高鳴っていくのを感じる。
「グリーン…」
「だから、もうどこにも行くなよ…」
グリーンは私の肩にかかる髪に顔を埋める。
縋るような声で呟く彼を、強く強く抱きしめた。
「うん…」
初めてグリーンが見せる繊細な一面。もしかしたら、普段の強気な発言やプライドの高さは、本当の自分を隠すための鎧なのかもしれない。誰にも弱音を吐かず、誰よりも努力をして、最年少でカントーのチャンピオンになって、そして、頂点に立つ栄光と挫折を経験して…。
私は、そんなグリーンが——
「大好き…ずっと」