第5章 ※Ever green!④
ホテルの最上階スイートルームなんて滅多に泊まれるもんじゃない。しかも天然温泉とルームサービスの朝食付。町の皆さんには言葉にならないほど感謝している。だけど、気がかりなことがある。
ベッドがひとつしかない…。
キングサイズのふかふかベッド。とてもとてもありがたいけど、私はここまで過激なごほうびを求めていない。
髪のケアを終えたので、つぎはソファーへ移動してバッグを開く。荷物を出していると、背後から声をかけられた。
「そろそろ寝ようぜ」
「荷物整理したいから先に休んでて」
「そんなの明日にしろって」
「もし寝坊して、朝バタバタだったら嫌だから今まとめる」
と言って、お土産や自分用に買った雑貨を黙々と仕分ける。
何がなんでもグリーンより夜更かしして、ソファーで寝る。そう心に決めたのだ。
「ほどほどにな」と一言返し、グリーンはそれ以上追求して来なかった。
からかうのが好きな彼がおとなしいというだけで、疲労困憊なのが見て取れる。
無理もない。一日中遊んだ後何十人ものブレイク団を相手に奮闘したんだから。疲れているならばゆっくり休んでもらおう。明日も休みでのんびりできるみたいだし。
今日の楽しかった出来事を思い返しながら、お土産を分ける。ポケモン勝負からはじまり、買い物にヒウンアイス、美味しいごはん、綺麗な夜景に、私のファー……
「いつまで待たせんだよ」
「っっっ!?」
突然背後から抱きしめられ、声にならない悲鳴をあげる。
「グリーン!?寝たかと思った!」
「寝るかよ。これからなのに」
「コレカラ?」
と、大袈裟にとぼけてみせると、グリーンは呆れたように息をついた。
「言っただろ。続きは優勝したらって」
誘うような声が耳元にまとわりつき、思わず肩が揺れた。
「それってさっきのキスのことじゃ…?」
「あれでオレが満足するとでも思ったのか」
首筋に吸い付くようなキスをされ、へにゃんと力が抜けた隙を見計らい、お姫様抱っこされる。
「相変わらずぼうぎょが低いな」
「ずるい…」
唇で触れられた箇所がジンジンする。
グリーンに抱っこされながらベッドまで運ばれ、柔らかいマットに身体が沈むと、覆いかぶさるように顔を覗き込んできた。