第2章 Ever green!①
日が傾いて、橙色に空が塗り替えられてゆく。
人が作りだした島でも、そんなこと感じさせないくらい綺麗で幻想的な景色だ。
グリーンの声が凪いだ海に響く。
「オレだってよ、いろいろ経験して大人になったんだ」
「経験って?」
「あの敗北は今でも忘れない。自分が積み上げてきたもんを一瞬でレッドのヤローに奪われちまった。チャンピオンでいられたのはほんの僅かだった」
グリーンは軽く息を吐き、続ける。
「あの時は、自分1人で強くなったつもりでいた。けどよ、そうじゃなかった。ポケモンとの信頼関係、戦ってきた全ての奴ら、そいつらのおかげでオレは強くなれたんだ。負けたことでそれに気付かされた」
「昔から負けず嫌いだったもんね。でもきっと、それがグリーンにとって成長のきっかけになったのかな」
視線が交われば、2人は自然と笑顔になった。
「なんだよ。生意気言うようになりやがって」
「私も大人になったんだもん」
何気ない会話のやり取りなのに、なぜだか胸の奥が熱くなる。
「そうだな。いつまでもガキのままじゃねーよな。オレもお前も」
そう言って、グリーンは海の方を向いた。
「あとは、そうだな。ジムリーダーになってからは、後輩達が強くなっていくのを見るのが楽しいんだ」
「すごいなぁ。すっかり指導者になっちゃって」
「それなのによ、1番手をかけてたヤツがいきなりいなくなっちまって」
「わかった。ジムのトレーナーさんが逃げ出したんでしょ」
そのトレーナーさんの気持ち、すごくよくわかるなぁと、ウンウン頷いた。
「そんなに厳しくしたつもりはねーし、挑んでくるたびにアドバイスもしてやってたんだけどな」
「きっとね、その人がいなくなったのは、グリーンが厳しいからじゃないと思うな」
「じゃあなんだよ」
食い気味に質問が返ってきた。