第5章 ※Ever green!④
「なんだよ。そんなに驚いて」
前に私が困るのが楽しいとか言っていたのに、意地悪しない?優しい…?
いつもならここで「相変わらずおくびょうだな!」とか冷やかしてきそうなのに。
「ごほうびってそういうこと?」
「どういう意味だ」
からかわれたと思ったのか、ジト目でこちらをにらみつけてくる。
「なんだか今日は優しいなって思って」
そう返すと、今度はプイッとそっぽを向いた。
「…あんなに怖がるとは思わなかったからな。リーフにもうるさく言われたし」
そういえば、みんなで帰る途中、ピジョットのスピード自慢の話をしているうちに例の予選の話になって、リーフちゃんに叱られていたっけ。もしかしたら、それを気にしているのかもしれない。
たしかに高いところは怖いけれど、なにもピジョットに乗せてもらうのが嫌なわけじゃない。あのスピードとGがかかる感覚さえなければむしろ楽しいくらいだ。
「この前みたいに急降下とかしないなら、ピジョットと一緒に空のおさんぽしたいな」
そう返すと、グリーンのムッとした表情が少し和らいだ気がした。
「今日は急ぎの用もないし、オレもそんな無茶はさせねーよ」
「じゃあ乗せてもらおうかな」
「いいぜ。その前に買い物な」
と言って、グリーンが手を結ぶ。
人通りが多いセントラルシティーで白昼堂々と手を繋ぐなんて、これじゃあまるで……
「買い物というよりデートだな」
「視線が…痛い」
「堂々と歩け。きずなの初代チャンピオン?」
含みのある言い方が気になったけど、一緒に歩いていると道行く人に優勝のお祝いコメントや賞賛をもらったり、写真撮影をお願いされたりして、自分が思っているよりも優勝したことが知れ渡っているのに驚いた。
「お似合いねー」なんて声もかけられ、恥ずかしくはあったものの、ようやくグリーンの隣を胸を張って歩ける気がして、控えめだった自分が少しずつ変わっていくのを感じたのだった。