第5章 ※Ever green!④
草原の向こうで繰り広げられる勝負は、互いに勝ちを譲らず、長期戦にもつれ込みそうだ。
言葉のない時間はゆったり流れる。
レッドの考えが読み取れなくなった理由、きっとそれは、私の問いが自分で見つけるべき答えだからなのかもしれない。
そう思った時だった。
「ボクも…分からない」
珍しくレッドが沈黙を破った。
レッドはいつも身につけている帽子をそっと外す。
「…でも、ボクの場合は分からないというより……」
普段無口な彼が、何かを伝えようと言葉を紡ぐ。
思い悩む素振りを見せると、外した帽子を手で回したり、掴んで弄ぶ。まるで、やり場のない気持ちをそこにぶつけているよう。
「レッドにもそういう人がいるの?」
そう尋ねると、帽子を被り直し、困ったように微笑んで首を横に振る。
「……分かりたくない」
「どうして?」
「……終わらせたくないから」
その言葉の真意が読み取れず首を傾げると、レッドは躊躇いがちに私の頭をそっと撫でた。視線が交わったまま、手がそっと離れる。
それから、レッドは急に押し黙ってしまった。
その続きを、なぜだか私も聞くことができなかった。
何かが壊れてしまう、そんな気がして。
凄まじい衝撃音が響いた後、グリーンの悪役のような高笑いが聞こえた。
「勝負、終わったみたいだね」
「……」
「うん。行こっか」
歩き出すレッドの背中を追いかけた。