第5章 ※Ever green!④
こうして、レッドとふたりきりになるのはいつぶりだろう。
横目でこっそりレッドを盗み見ると、白熱する戦いを楽しそうに眺めている。その無邪気な様子に、思わず笑みをこぼした。
グリーンと一緒にいると心が落ち着かず、いつもドキドキしてしまう。でも、レッドだとなぜか、まるで本当の兄といるような安心感が湧いてくる。
と、不意にレッドと目が合った。
「…?」
「ああ、リーフちゃんが怒ってる理由?さっきね、私の伝え方が下手でグリーンのことを誤解させちゃって」
自嘲気味にため息をこぼす。
「グリーンは悪くないのに。なーんにも」
「????」
こんな言い方したらそりゃあレッドも気になるよね、と胸中で自身を責める。話せないならはじめから何も言わなければいいのに。私は何をしているんだろう。
そもそも、グリーンは不安がる私に気持ちを表現してくれただけだ。
リーフちゃんには余計なことは言わず、不安になった私を安心させようとして、思いを行動で表現してくれたことだけを伝えればよかったんだ。
寡黙なレッドは、心配そうに見つめながら、何も言わずにそっと寄り添ってくれる。
その優しさに満ちた存在感に、つい心の内を話したくなった。
「ねぇレッド」
「どうした?」と優しい瞳が語りかけてくる。
「なんで不安だったり自信がないと、相手の気持ちが分からなくなっちゃうんだろうね。確かめないと安心できないの」
レッドはキョトンとしている。
「ちゃんと考えればわかるはずなのに、どうしても不安になるんだ。一緒に過ごした時間も、たくさんくれた言葉もあるのに、考えれば考えるほどわからなくなって、その度に確かめたくなって…」
「……!」
一瞬、その瞳に驚きと戸惑いが浮かぶ。しかしレッドはすぐに帽子を深くかぶり直した。まるで視線を避けるように。
いつもは言葉がなくてもレッドの考えていることが分かるのに、この時だけはなぜか読み取れない。
しばらく、言葉の無い時間が流れた。