第4章 Ever green!③
視界に火の海が広がる中、目を凝らしサンダースを探すと、小さな影がひとつ炎と煙に混じって揺らめいている。
サンダースを呼ぶと、聴き馴染んだ鳴き声が返ってきた。
よかった。どうやら致命傷は受けていないようだ。きっとハイドロカノンの水飛沫を浴びたおかげで、少しはダメージを軽減できたのかもしれない。
サンダースは少しよろめきながら私の足元に戻ってきた。
メガカメックスも煙塵の中、甲羅から身体を出して立ち上がった。
サンダースよりダメージは見られないものの、やはりメガカメックスも無傷では済まなかったようだ。
「カメックスは平気だ。サンダース、まだいけるか?」
「キュイ!」
サンダースはくるりと方向転換し、対戦相手の方へ顔を向けた。
「がんばるって」
「よし!」
激しい戦いで崩れた前髪をかき上げ、グリーンが安堵の表情を見せる。
「もう!レッドったらせっかく生やしたツタまで全部燃やしちゃって」
腰に手をあててふくれっ顔のリーフちゃん。
「へっ、おかげで動きやすくなったぜ!」
グリーンは皮肉混じりに口の端を上げる。
「余裕ぶってるけど、ならこれは見切れる!?」
リーフちゃんが叫ぶと、再びメガフシギバナの鋭利な葉が2匹に襲いかかった。
グリーンの顔色が変わる。
「避けろ!」
2匹はその声に反応したものの、ダメージを受けて動きが鈍くなっていたため、直撃は避けつつ数箇所のすり傷を作ってしまった。
「よかった、かすり傷だけみたい」
「まずいな」
「え?」
「どく状態だ」
「はっぱカッターで?」
「ああ。しかももうどくだ」
この大会のルールでは、1日開催で時間が限られているのもあり、試合が長引かないようどうぐは使用禁止になっている。
束の間の安堵が、一気に絶望へと塗り替えられた。