第17章 ペパーミントラブ
いや落ち着こう。きっとこれは罠だ。
横で寝て、油断した隙にたぷんとしたお腹をつねられてギャハハハって悪魔のような笑い声をあげる姿が目に浮かぶ。
だけど、もし罠じゃなかったら?私は自ら楽園から足を遠のけるというの?
「どうする?ナナ」
挑発的な微笑みが容赦なく理性を揺さぶってくる。
帰宅か添い寝か。ひとりかふたりか。孤独か温もりか。
理性と欲望がぐるぐる混ざって、まるで甘い渦巻きに巻かれるようにクラクラしてきた。
「私は——」
——というわけで、
「消すぞ」
「はーい」
消灯して、グリーンがベッドに潜り込んできた。
誘惑にあっさり敗北した私は、毛布の中でグリーンに包まれている。歯ブラシも置かせてもらってるし、部屋着にぶかぶかなTシャツなんかも借りちゃって、すっかり半同棲だ。
ようやく暗闇に目が慣れた頃、ぱちりと目を開ける。グリーンは、腕枕しながら向かい合い、私を抱きしめたまま目を閉じている。いつもセットしてツンツンな髪が、今はシャワーを浴びてサラサラで、前髪が顔にかかっているのが妙に色っぽい。
「今日はクタクタだぜ」
「おつかれさま。明日もアカデミー行くの?」
「いや、指導はねえけどセントラルシティの警備を頼まれてる」
「そっかあ、大変だ」
グリーンは眠そうにあくびをした。
「ナナは寝れそうか?」
薄目を開けて、グリーンが問う。部屋着がはだけて鎖骨が見えている。目の前でこんな刺激物を見せられては、とてもじゃないけど眠れない。
「うん、私も眠くなってきた」
小さな嘘をつき、ごろんと背中を向けて身体をまるめる。心を落ち着かせるために小さく息をついた。
「そうか、よかった」
眠気を纏った声でグリーンが呟いた。