第17章 ペパーミントラブ
「なんで来ないんだよ?」
「だって、お腹いっぱいでしょ?」
「まあな」
「乗っかって、グリーンの内臓圧迫して、なにかあっても責任取れないもん」
と言いつつ、本音はサンドウィッチを食べすぎて太ったのがバレたくないだけである。お腹がぱんぱんで、さっきからずっと苦しいのだ。もしそういう雰囲気になっても、お腹は見られたくないから今夜はなんとか逃げ切りたい。
すると、グリーンは目元を手で抑え、下を向いた。なにやら肩が震えている。
「内臓って…おまえ…」
声を押し殺しながら、喉の奥で笑ってる。なにがツボなのかよくわからないけどこの隙に離れよう。
「とにかく、今日はサンドウィッチ届けたかっただけだから、じゃあ…」
「まあまあ、待てって」
手首を掴まれ、とすんと椅子に座らされる。すぐそばにある余裕たっぷりで勝ち気な笑顔に、ひとりでに心臓がバクバクする。
「なんでそんなにオレを避けるんだよ」
「避けてるわけじゃないけど…」
チラッと顔を盗み見ると、グリーンは私の動揺を見透かすように、足を組んで斜に構えてる。
ずるい。そのポージングはかっこいい。
「べつに帰るなら送ってくけどよ、オレは一緒にいたかった」
「え」
ストレートなグリーンほど破壊力の高いものはない。
「たまには、一緒に寝るだけの日があってもいいかなって思ってたんだけどな」
なんだか思ってたのと違う方向に話が進み始めた。
「寝るだけって、まさか、添い寝…ってこと?」
「悪い話じゃないだろ?」と言いながら、頬杖をついて誘い込むように見つめてくる。
ゴクリと喉をならす。
グリーンの添い寝。腕枕。寝顔。匂い。体温。
それは、私がこの世で最も大好きな場所。私が安らげる安住の地、ユートピア。