第17章 ペパーミントラブ
作業の手を進めながら、ふとペパーくんは顔を上げる。ソファーで眠るマフィティフとトゲピーを眺め、やるせない顔を見せた。
「あのトゲピー、ロケット団の実験で弱っちまったんだろ?あいつにトレーナーはいるのか?」
Nは表情に影を落とし、首を横に振った。
「トゲピーの声を聞く限り、野生で暮らしていたのを捕まえられ、そのまま実験に利用されたんだと思う」
「たぶんNの言う通りだよ。ヒナギク博士がパシオでトゲピーのトレーナーを探してみたけど、見つからなかったって言ってたし」
私たちの言葉を受けて、ペパーくんは悔しそうに歯噛みする。
「そんなこと、あっちゃならねえ、許せねえよ、あんなに小さなトゲピーに…」
ロケット団は、ポケモンを道具のように利用する。あのサカキの強さへの固執、執念はどこから湧いてくるのか。そしてなぜ、世界を自分のものにしようとするのだろう。
最近また、ロケット団の動きが目につくようになったのも気がかりだ。今朝だって、Nとの調査でロケット団のポケモン誘拐を阻止してきたばかりだ。
妙な胸騒ぎがして、嫌な予感を振り切るように顔を上げた。
すると、しんみりした空気をリセットするかのように、ペパーくんが両頬をパンっとはたいて気合いを入れる。
「よし、ちゃっちゃと作るか!ただ元気にするだけじゃなく、美味しくてほっぺた落ちるぐらいのごちそうを作ってやるぜ!」
その勢いに引っ張られるように、私も明るい声を出す。
「ペパー先生!次は何をしたらいいかな?」