第17章 ペパーミントラブ
「…マフィティフは、ペパーくんのたからものなんだね」
なにげなく言ったひとことに、ペパーくんは目を丸くして眉を上げる。
「どうしたの?」
そう聞くと、少し照れくさそうに小さく笑った。
「いや……アンタが課外授業みたいなこと言うもんだから、ちょっと驚いただけだ」
「おんなじ?どういう意味?」
「自分だけの『宝探し』が課題だったんだ」
課外授業のテーマはクラベル校長が考えたそうだ。
宝探しかぁ。単純なようでとても奥深いテーマだ。さすがクラベル校長。
ペパーくんの言葉につられて、自分の“たからもの”について考えてみる。
幼馴染、ポケモンたち、チームメイト。それから、夏祭りでもらったかんざしに、にじいろのはね。
——やっぱり、ひとつに絞るのはむずかしい。
たぶん、こうして積み重なってきた日常そのものが、私のたからものなんだ。
そんなことをぼんやり考えていたら、胸の奥がほんのりあたたかくなった。
「それで、課外授業でペパーくんはどんなたからものを見つけたの?」
「オレか?そりゃあもちろん秘伝スパイスに決まってる!」
そう言ったペパーくんの視線の先にはマフィティフの姿があった。それってつまり、間接的にマフィティフがたからものと言っているようなものだ。
「そっか…マフィティフが元気になってよかったね」
「おう、ダチとの冒険がいい思い出になったのも、マフィティフのおかげだしな」
と、言ってから、ペパーくんが私の顔を覗き込む。
「ん?オマエ、なんか涙目になってねえか?」
「えっと、タマネギのせいかな」
「タマネギ使ってねえけど」
「ナナはね、共感力が高くてすぐ泣いてしまうんだ。悲しくても嬉しくてもね」
バレないように俯いていたのに、ふたりにはお見通しだった。ペパーくんは呆れたように眉を下げて笑っている。