第17章 ペパーミントラブ
作業しながら3人でおしゃべりしていると、ペパーくんはパルデア地方のアカデミー生だと教えてくれた。どうやってNと知り合ったのか聞いたら、パシオでNに追いかけ回されたらしい。
「初対面でラブだ世界だ言われながら追いかけられたんだよ」
苦笑しながらペパーくんが言う。
「N、そんなにペパーくんが気になっちゃったの?」
「ああ、彼とポケモンはとても理想的なバディーズだったからね。もっとマフィティフの声を聞かせてほしくて、好奇心のままに追いかけたんだ」
「今はもう慣れたけどよ、はじめは不思議ちゃんすぎて対応に困ったぜ」
「あははっ、Nらしいね」
無邪気に追い回すNの姿を思い浮かべる。見た目は大人でも、中身は純度100%のイノセントちゃんなので、初対面だとさぞ驚いただろうな、とウンウン頷いた。私もNと知り合って随分経つけど、そのピュアさには今でもたまに驚かされる。
りんごの皮を器用にしゅるしゅる剥きながら、ペパーくんがどこか懐かしむような顔つきで語り始めた。
「Nはオレたちを理想だなんだ褒めてくれるけどよ、マフィティフはちょっと前まで大怪我をしてロクに動けないような体だったんだ。オレが健康料理の研究に目覚めたのもそれがきっかけだしな」
「そうだったんだ……じゃあ、ペパーくんの料理で元気に?」
「おう!どんな怪我や病気も治るっていう秘伝スパイスを探して、パルデア中を冒険したんだ。あの頃はダチと一緒に、無我夢中でスパイスを探し回ってたぜ」
ちらっとお昼寝するマフィティフとトゲピーを見やる。あんなに元気そうなのに、かつて動けないほど重症だったというのが想像がつかない。きっと、ペパーくんの努力と愛情がマフィティフを助けたんだろう。
そのマフィティフが、今は弱っているトゲピーに寄り添ってくれている。優しさに満ちた光景に、料理中だというのにジーンときてしまう。これ以上見たら涙腺がやられるので、作業中の手元に視線を戻した。