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【ポケモン】パシオで恋して

第17章 ペパーミントラブ



研究所に入るや否や、ペパーくんはミントのすさまじい残り香に眉をひそめてうめいた。

「うおッ、すごい匂いしてんな」

「そうなのよ、張り切ってつい作りすぎちゃってね…」

ヒナギク博士は、匂いをどうにか追い出そうとクリアファイルをひらひら扇ぎながら、開け放した窓の前に立っていた。振り返り、助けを求めるように困り顔を向けてくる。

「あのミントは匂いがキツいから、作る量をもう少し減らせばよかったわ…」

「こんな匂いが充満してたら、そりゃあトゲピーも嫌がるわな。マフィティフ、これから料理するから、向こうでトゲピーと一緒にいてやってくれ」

「バウ」

トゲピーは、ソファーの上からこちらの様子を伺っている。人が増えてさらに不安そうだ。

ペパーくんの相棒であるマフィティフは、そっとソファに上がり、トゲピーの隣へ身を寄せて伏せた。大きな体を丸めて、守るように寄り添っている。

フカフカな毛皮に包まれ、トゲピーは気持ちよさそうだ。安心したのか、やがてすぐにお昼寝を始めた。

そんな2匹を見て、Nはひだまりのようにあたたかく笑った。

「優しいね、ペパーの家族は」

「だろ?マフィティフはいいヤツなんだ。辛いヤツの気持ちを察して、ああやって寄り添ってくれるんだ」

「気持ちよさそうに寝てるね。かわいいなあ」

心温まるポケモンたちの姿をいつまでも眺めていたいけど、トゲピーがすやすや眠っている間に、料理を完成させてあげないとだ。

「では博士、キッチンお借りしますね」

「ええ、私は向こうで作業してるから、なにかあったら呼んでね。グッドラック!」

博士はデスクに移動し、PCで研究データをまとめ始めた。その様子を、ペパーくんはぼんやりと眺めている。

「ペパー、ヒナギク博士に聞きたいことでもあるのかい?」

Nの問いに、ペパーくんは一瞬目を見開き、かぶりを振った。

「いや…なんでもない。ミントの匂いで少しボーッとしただけだ」

そう言って、気持ちを切り替えるようにニッカリ笑って腕まくりをする。

「よし、さっさと始めるか」

「お願いしますっ」

キッチンに、みんなで買い集めた食材をズラリと並べた。


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