第16章 想いを祝福にのせて
ナナの顎を指先で上げる。こちらへ顔を向けたナナに、なにも言わずにキスを落とした。
ナナは驚いて身体を強張らせる。
「ん……ここ、外…ッ」
「少しだけ…」
「でも…ッ」
「いいから…だまってろ」
抱きしめる腕の力を強めて口を塞ぐ。
ナナは逃げられないとわかったのか、キスに身を委ねるようにそのまま全身を弛緩させた。
優しく、柔らかなキスを重ねる。ほんのりピンクに色づく唇は、オレが求めるがままに想いを受け入れ、互いの呼吸が混ざって溶けていく。
甘やかしたい気持ちと、乱暴に奪いたい気持ちがせめぎ合う。
大体、誕生日なんだからなにしたって許されるか?
……許されねえか。
歯止めが効かなくなる前に、唇をそっと離した。
キスが終わりを迎えると、唇の余熱と一緒に香水の香りがふわりと立ち上がった。
「この香水をさ…オレたちの香りにしようぜ」
そう囁いて、ナナの首筋に甘く吸い付く。身体がより密着し、香水がオレの鼻先をくすぐった。
「こうすれば……離れても、会えない夜も、ずっと残るだろ……」
ナナの体温に自分を残したくて背中を掻き抱く。ナナは腕の中で吐息をこぼした。
「く、くるしぃ…っ」
「お前が寂しくないよう、しっかりつけてやってんだよ」
「…今日は、このまま帰るってこと…?」
「帰らないのか?」
ナナは、ハッとして耳まで真っ赤にした。