第16章 想いを祝福にのせて
わかりやすく伝えてるつもりなんだけどな。
ナナに一歩近寄る。すると、警戒心の強いナナは、今度は疑ってかかる。
「なんか企んでる?」
「お前なぁ…」
(このムードをぶち壊すほどバカじゃねえよ)
と、心の中でぼやく。
相変わらずなナナだけど、だからこそオレも一緒にいて安心するんだろう。
ナナは昔のまま、おくびょうで泣き虫なくせに、いつだってオレにまっすぐな想いを向けてくる。
ずっと変わらない、オレだけの居場所。
もう離さないし、誰にも渡すつもりもない。
言葉で伝える代わりに、ナナを強く抱きしめた。
ナナは腕に包まれ、もぞもぞしながらオレを睨む。
「あの、だからね、急にはびっくりするって」
「急じゃねえよ。さっきから言ってただろ」
「あ……香水つけるってそういうこと…?」
「そういうこと」
ナナはようやくすべてを理解したようだった。ぴたりとくっついた身体から、胸の鼓動が高鳴っていくのが伝わってくる。
「…いい匂いぃ…」
ナナはおずおずと腕を回して抱きしめ返してきた。息をゆっくり吐いてから、鼻から深く吸って味わっている。
「自画自賛ってヤツか?」
「うん…これは最高傑作かも…」
「めずらしく自信まんまんじゃねーか」
どこか間抜けな返答に、思わずくぐもった声で笑う。
「グリーン…あのね…」
「なんだよ?今度は最後まで言えよ?」
「……実はね、さっき嘘ついちゃった」
「嘘って?香水は手作りじゃないとか?」
ナナは控えめに首を横に振る。
「グリーンが言ったからじゃない……私が、グリーンと……」
縋るように顔を埋める甘えた仕草。ナナのシャンプーの香りと香水が混ざり、愛おしい気持ちが止められなくなって、オレの理性がどうにかなっちまいそうだ。
「……ずっと一緒がいいなって……。だから、私の好きな花の香りを混ぜたの…」
「……そうか。 ならさ——」