第16章 想いを祝福にのせて
「…クサイハナのエキスとか入ってないよな?」
「ふふふ、クサイハナは香水の原料になるらしいから入ってるかもね?」
「おい、いくらお前の手作りでも、あの匂いはゴメンだぜ?」
「いいからつけてみて!」
香水の瓶を持ち、ふたを開ける。透き通ったライトグリーンの液体が瓶の中で揺れている。スプレーノズルから軽やかな柑橘の香りが立ち上り、その清涼な香りに目を細めた。
「どこにつけると、いちばん香りが残るか知ってるか?」
そう言って、手首にひと吹きしたあと、首筋にもう1プッシュする。
「脈があるとこだ。体温で香りが立つらしい」
「へぇ…!なんとなく手首につけてたけど、理由までは知らなかった」
ちょっとしたうんちくにすら、ナナは目を丸くして感心する。その反応に満足してから、ゆっくりと息を吸い込んだ。
爽やかさの中にスパイシーな香りが混ざり、甘い余韻がほのかに残る。クールさの中に色気を秘めた、まさにオレ様に相応しい香りだ。
「いい匂いだな。ほんとにナナが考えたのか?」
香りを味わうため、目を閉じて手首を顔に近づける。
「うん!グリーンをイメージして調合したんだ」
「オレのイメージって?」
「それは……香りでいろいろ察してくださいっ」
なにが恥ずかしいのかさっぱりだが、ナナは選んだ香りについて一切教えない。オレにメロメロなのは知ってるけど、そこまで照れるほどか?
香水を纏った空気をゆっくり吸い込めば、ふわりと甘い香りが後を引いた。
「そうだな…気に入ったけど、ちょっとイメージと違った香りもする」
「え?ダメだった?」
「いや、いい匂いだけどさ、最後に残る甘い香りはちょっと独特だよな」
ナナの瞳が一瞬揺らめき、恥ずかしそうに俯いた。