第15章 マジカルハロウィンナイト
笑ってるのがバレたらもっと拗ねるかと思い、そっと視線を下げると、
「ナナ」
見上げれば、高いヒールのせいでいつもより顔が近い。
琥珀を透かしたような瞳が、明かりを反射してきらきら光る。
「……きれいだ」
「…ッ!?」
「…っと、どうせ転ぶと思ったぜ」
離れかけた身体を力強く抱き寄せられる。唇が触れそうになるほど近づき、一瞬息が止まった。
慌てて背中を反らし、顔を離す。全身が熱を帯びていくのを感じる。
「びっくりした!褒めるなら予告して!」
「予測できないのに予告できるわけねえだろ」
「そうやってまた私をからかって!」
「オレだって言うつもりなかったけど、仕方ねえだろ言っちまったもんは!」
と言いながら、また転ぶのは予測してたようで、脚の力が抜けかけたのを、腰に添えられた手が支えてくれた。
「もう…っ」
嬉しいのに、素直になれない。グリーンの言葉は容赦なく私を翻弄する。
目を伏せて、口から出てきたのは感謝の言葉ではなく、照れくささを誤魔化す台詞だった。
「…き、キバナさんがね、ドレスを選んでくれたんだ。グリーンを驚かせようって」
「気持ちはありがたいが」
「!!」
突然、背中が仰け反るほど身体を傾けられた。
一瞬で視界がぐるりと反転し、天井で踊るシャンデラたちが目に映る。
「選ぶのも踊るのも、次はぜんぶオレな?」
声と視線に射抜かれて、思考がフリーズする。鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらい心臓が五月蝿い。