第15章 マジカルハロウィンナイト
返事をする余裕なんてもうない。声を出せずに微かに頷くと、グリーンは満足げに微笑んだ。
身体を引き起こされ、またふたりの世界がゆるやかに回り始める。
つながった手も、肩に触れて感じる体温も、どうしてグリーンだとこんなにも胸が苦しくなるのだろう。
誰よりもそばにいて、誰よりも触れ合っているはずなのに、なぜこうしているだけで、嬉しくて、辛くて、泣きそうになっちゃうんだろう。
その声も、顔も、仕草も、グリーンの全てが私の世界を色鮮やかに変えてしまう。
「お前、懲りずにまた人前でそういう顔して…」
「やだ…言わないで」
自覚はしてる。嬉しくて、見惚れちゃって、どうしようもなく好きで、どうせそれが顔に出てるって言いたいんでしょ。
きつく抱き寄せられ、ふたりの鼓動が重なる。
「言わないから、もっとその顔見せろよ」
挑発的な視線が私を捕らえ、いつも通り虜にさせられる。見つめ合うだけで胸がぎゅうって締め付けられ、直視するのは2秒が限界だった。
「こっち向けって」
「むり」
「なんでだよ」
「だって…」
嬉しいのに、辛い。苦しくて、甘い。
もう堪えられない。想いが溢れて止まらない。
これ以上、好きになったら、きっともう、私は——
「死んじゃう…」
グリーンが目を見開く。
「…好きすぎて、死んじゃう」
「…お前さ」
グリーンが呆れたようにため息をつく。
「……オレまで殺す気かよ」
ハロウィンの夜、魔法がかけられた時間はもう少しだけ続くのだった。