第15章 マジカルハロウィンナイト
上品な仕草で差し出された手、黒の格式高い燕尾服姿。いつもと違う雰囲気に、一瞬で心が惹きつけられる。
「…どうして、ここに?」
「ダンデから連絡がきて戻ってきたんだ」
「ダンデさん、いつのまに…」
高鳴る鼓動をひた隠し、手のひらにそっと指先を重ねると、グリーンは身を屈めて手の甲にキスを落とした。
(お、王子様のそれだ…!)
ドキリとして背筋がピンと伸びる。
手の甲が発火しそうだ。熱くて、苦しくて、少しの摩擦で火がついてしまいそう。
オニオンくんは、はわわと慌てふためいて両手で顔を隠した。私も内心はわわだけど、なにがなんでもオニオンくんを紹介しないといけない。
ここまで無事に来られたのは、オニオンくんのおかげなのだから。
「あのね、オニオンくんがね、私をここまで連れて来てくれたんだよ。ずっとずーっと助けてくれたの」
「そうか、サンキューな!こいつ怖がりで大変だったろ?」
「と、とんでもないっ……ボクもっ、ナナさんに助けられたので…」
すっかり挙動不審になったオニオンくん。「では」と一言告げて、壁際まで避難してしまった。隠れながらこちらの様子をうかがっている。
「逃げちまったな」
「うん、とっても内気だからそっとしておいた方がいいと思う」
ひとりでいるオニオンくんを心配して、ゲンガーが隣に寄り添っている。その様子に安堵して、視線をグリーンへと戻した。
「踊れるか?」
「みんなが教えてくれたから、なんとなくは」
「みんな?ダンデのヤツ、オレが来るまで盛大にもてなすって言ってたのはそういう意味か」
小声でそう呟きながら、背中にそっと触れてくる。
「そんじゃ、主役はこのグリーン様ってことで」
「はい、よろしくお願いします」
ゆっくりと視界が回り始める。視界の端に、ダンデさんとキバナさんがこちらを見て笑っているのが映り、こっそり笑顔を返しておいた。