第15章 マジカルハロウィンナイト
今までは見上げて踊っていたけど、最後の王子様は私より背が低い。身長差から、肩の後ろではなく腰の上に手を添えられる。
「あのっ、ナナさん」
「なあに?」
「…ボク、今日のためにゲンガーとワルツの練習したんです…」
私を見上げながら、照れくさそうにオニオンくんが話しかけてくる。
「ゲンガーもワルツ踊れるの?すごい!」
「はい、向こうを見てください…」
と言われ、オニオンくんが顔を向けた先を見やると、ゲンガーとジュペッタのかわいらしいコンビがくるくると回っていた。
「え、かわいい、すごくかわいい」
思わず釘付けになり、ステップがズレてよろめく。
「あぶない…っ!」
オニオンくんが咄嗟に抱き寄せてくれたおかげで転ばずに済んだ。ふたり揃って安堵のため息をつく。
「…大丈夫、ですか?」
「うん…ごめんね…ゲンガーたちがかわいすぎて…」
「怪我しなくて…よかった…」
「支えてくれてありがとうね」
お礼を言って目が合うと、オニオンくんは急に狼狽え始めた。
「……う、わぁぁぁ…ごっ、ごめんなさいっ!」
「え?」
バッと体を離し、ペコペコと頭を下げてくる。
「ボク、あなたにくっついてました…!」
慌てふためくオニオンくん。助けてくれたのだから、むしろ謝るのはこちらの方だと伝えても、申し訳なさそうに両手で顔を覆いぷるぷるしている。
そんな私たちを見かねたキバナさんが、遠くから手でダンスのジェスチャーをして促してくる。
「オニオンくん、曲が終わっちゃう」
「そう…ですね…踊らないと」
「ええと、どうやって構えるんだっけ?」
「どう…でしたっけ?」
周囲で踊る人たちを見て、互いにワルツの構えをまねてみる。
そうして、不器用なふたりはまたゆっくりと回り始めた。